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イースターエッグの夜 こぼれおちる、



ご主人様の受難 2010.05.05(Wed) 


「お前、最近苛々し過ぎてね?」

「……」
 エミリーは露骨に嫌そうな顔をした。
 キースは半眼でそんな彼女を眺めた。頬杖をつきながら。
「……そんなことありませんけど」
「そーか?」
「ええ。それよりご主人様、その体勢はしたないですよ」
「あーいーのいーの。この部屋滅多にひと来ないし」
 ちっ――と舌打ちが聞こえた。「……」呆れて見やればエミリーは隠すことなく侮蔑の眼差しを浮かべていた。
「……オイ。仮にも主に向かってそりゃないだろ」
「仮にも私の主がこんなに駄目男なんてそれはないでしょう」
 なんてひどいメイドなんだ、とキースは思った。
「何。なんか嫌なことでもあったわけ」
「いえ別に」
「言えよ」
「下らないご命令にはお答え出来かねます」
「お前はもうすぐ俺の妻だろう」
 ぴたり、とエミリーの動きが止まった。
 背を向けていた彼女は、苦虫を千匹は噛み潰したような顔で振り返った。
「……だから?」
「妻の悩みを聞くのは夫の役目だからな」
「……滅べ」
 ぼそ、とエミリーは呟いた。キースは笑顔のまま引き攣った。
「お前、俺と結婚したくないの」
「私、浮き名の激しい駄男とは一緒になりたくありません。ついでに言えばメイド仕事が大好きなんです」
「後半が本音だろ」俺には大好きなんて言ったことないくせに。キースは多少がっくりした。「……つーか、何?浮き名って。流した覚えないんだけど」
「流した覚えがなくとも噂とは流れるものですよ」
「いやいやいや。だから何の話だよ」
「――先週三垣の日。エメルリア―ヌ・ル・ジェンナで綺麗な金髪、赤いドレスに豊満なお胸をお持ちのご夫人と指輪」
 ぴし、とキースは固まった。
 ちらり、とエミリーの視線が注がれる。
「え、は、見てたの?」
「ええしっかりと」
 あ、そう…とキースが乾いた声で答えた。徐々に耳元が赤くなっていく。だが、エミリーはその様にはとんと気付かなかった。
「綺麗な巻き毛でした」
「え。そう、か…?」
「明るくてまばゆい金髪でした」
「……お前の髪の方が、綺麗な金だと思うけど」
「ちゃちなお世辞は結構。おまけにすらりとか細い肢体に柔かに反った背のライン、そして豊満なお胸」
「……ああまぁお前ちっちぇもんな――ぐぉっ」
「下品!」
「おま、お前が先に言ったんだろうが!つーかブロンズなんか投げんな恐ろしい!」
 てのひらサイズの凶器をなんとかよけ、さらに受け止め、冷や汗を掻きながら椅子にもたれかかる。エミリーは再び舌打ちした。……この女は自分を殺したいのか。
「てか、何でそれで怒ってんだよ」
「私は愛人になりたい訳ではございませんが」
「…………はぁッ ?! 」
 キースは仰天した。がたんっ、と椅子から音を立てて立ち上がる。その拍子に椅子が倒れた。エミリーが冷ややかな眼差しで、さらに眉尻を逆立てたが、気にしなかった。
「待て待て待て!何でそんな話になるんだ!俺はお前以外に求婚したことはないぞ ?! 」
「何寝ぼけたこと言ってんですか?」
「寝ぼけてねぇから!アホか!――っていや、お前がアホって言ったんじゃなくてだな、この状況に対してでだな、だからその万年筆を下ろせ!」
「状況って何がです?」
 エミリーは万年筆を構えたまま問うた。
「や、だからだなーその、」
 ぽりぽりと頭を掻きながら、キースは忙しなく目を泳がせて、自分の直ぐ後ろの机の戸をがたがたと開けた。後ろ手で。エミリーは訝し気にその様子を眺めた。
「何して……」
「――ほら!」
 ばっ――と指し出されたそれに、エミリーはぱちくりと目を丸くした。赤い、ベルベット地で覆われた、小箱。
「なんですか、これ」
「お前ってほんっっと雰囲気読まねぇっつか俺の予定をことごとく狂わすよな!」
「はぁ?」
「いーから、ほら」
 エミリーの白いてのひらに、ぽん、と小箱が落とされる。「開けても?」「いーから渡してんだろ」それもそうだと納得し、彼女はそっと高価そうな箱を開けた。
「――――――は?」
 中身を見たエミリーは、ものの見事に固まった。
 ちらりともうすぐ夫、今は主の男を窺う。……そこはかとなく顔が赤い。
 ベルベットの箱の中身は指輪だった。
 金色のシンプルな指輪。中側にちいさく何か彫り込まれている。これは。
「……なんだよ」
「い、いえ…」
「言え」
「率直に申し上げますとあなたがこのようなキザったらしいことするとは全く思っておりませんでしたので、」
「……つまり?」ぴくぴくとキースの頬骨が引き攣っている。が、エミリーは全く気にせずに続けた。
「ものすごく驚きました」
「あっそー!」
 ふんっ、とキースはやけのように怒鳴ってからそっぽを向いた。
 エミリーはぽかんとしつつも呆れた。
(……子供みたい)
 きゅぅっ、と胸の奥が熱くなる。
「ご主人様、馬鹿みたいですよ」
「お、ま、え、は、他に言うことないのか」
「――嬉しいです」
 びきっ、と先程以上にキースは動きを止めた。固まった。
 振り向くとエミリーは花咲くように笑っていた。
 久しぶりの、喜色満面な笑顔だった。
 かーっ、と全身が熱くなる。本来はメイドなんてする立場じゃない彼女の、真っ白な肌が目に痛い。だが、その真っ白な肌を仄かに朱に染めた頬が、さらに鼓動を早くする。
(――――ったく、この俺が、何でこう…)
 キースはものすごく負けた気分だった。
 何だか非常にむしゃくしゃして、だが反対に酷く気分が高まって、キースは取り敢えずもうすぐ妻になってくれるだろう最愛の少女を、力の限りに抱きしめた。





―――そしてエミリーに殴られると!←

すみません、これ、本当はお題で考え始めたのが正反対な感じになったので没、再利用て感じの可哀相な話です。
ノリと勢いだけで書きました。
だから誤字脱字めっちゃくちゃ多いと思います(汗
あわわわわわ。

色々裏設定があるんですが、ほとんど書いてません。
浮気と誤解された恋人にめろめろな美形が書きたかった筈が何か違う感じに…まぁ、いいか。


ではではここまでおつきあい下さって有難うございましたーっ(平伏

[雑々] |コメント : 2トラックバック : 0  |

comment

  

No title

「待て待て待て!」のくだりが最高です。
キースさんはがっっっつりエミリーさんのお尻に敷かれてしまうんだろーなぁ、なんてニヨニヨしながら読ませていただきました。そーゆう意味では「ご主人様の受難」なのかしらん? ホレた弱みってヤツですね^^

やー、しかしかわいいふたりですねぇ。
新婚生活編とか読みたいです!是非!

2010-05-06|ミズマ。 #-|URL|[ 編集 ]

ミズマ。さま

コメント有難うございますッ><(全力で平伏

「待て待て待て!」、有難うございますっ
そうですね、キースはとことんエミリーに負け負けなんでしょう!(笑
そうそうそうなんです!結婚は人生の墓場って言いますよね、という← 幸せな墓場なら良いんじゃないかとか他人事に思ってしまう二人ですが(汗
ホレた弱みってヤツですね(笑

わわわわ、有難うございます!もう嬉し涙で顔面崩壊です…!
がが、頑張ってみます!おそらく忘れたころに!←

2010-05-07|祭歌 #-|URL|[ 編集 ]

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チョコレート中毒に加え重度の活字中毒です。虚弱ひ弱胃弱の三冠チキン。はなしかけてやると小躍りします。隠居したい。
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